アンテロープの洞窟に向かうには
ナバホ族のドライバーの
トラックに乗り換えます。
ドライバーさんは
チャールス・ブロンソンを
思い出させる風貌です。

こうした砂地をトラックは　がたがたと走ります。
ここは　雨が降って鉄砲水が出たときには　川になるところです。
この砂の川は　鉄砲水の置き土産です。

洞窟内は狭く　我々同行者のほかにも　観光客がごった返しています。
その上　三脚を立てるカメラマンもいて　人の流れが滞りがちでした。

観光客は洞窟の真上から　光が射し込む　昼前後の時間帯に集中します。
私たちのすぐ後に　大きなアジア人グループが賑やかに入ってきました。

岩の形をみて
あれこれ想像するのでしょう。
ここで　岩を見上げると
リンカーン大統領が
見えるというところです。
尖った鼻　あごひげ
確かに　それっぽい。

今でも　年に何度か　夏場に鉄砲水が起こるそうです。
押し寄せる激流は洞窟に流れ込み　渦巻き　やわらかな壁を削り　
下に溜まった　細かい砂を　一気に押し出します。

岩の壁にできた美しい縞模様は　
砂の混じった水が激しく渦巻き　洞窟内であばれ　岩肌をこすった痕です。

複雑な形を眺めながら　洞内を激しく流れる　水流を想像してみます。
その複雑な形　模様に　しばらくは見とれていたい気分です。
が　現実は　押し合いへしあい状態で　ゆっくり見るということができません。
そういえば　色も姿も　内視鏡で見た人間の体内にも似ています。

風が吹くと　天井や壁面が削られて　上から細かな砂が降ってきます。
射し込む光を受けて　白い滝のようです。
洞窟の下には　そうしたさらさらした赤い砂が　厚く積っています。

内部を見ながら　のろのろ進みますから　時間はかかりますが
距離はそんなに長くはありません。　ここが　出口側です。
この洞窟を掘った鉄砲水は　この隙間を目がけて押し寄せるのです。
しかし　なぜ　この一点だけが狙われたのでしょうか。

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